高額商品の販売力を高め、かつ、安定的な収入を得るビジネスモデル

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 本日は、「アフター縛り」というビジネスモデルについて紹介する。これは、いわゆる携帯電話やコピー機でよく見られるビジネスモデルである。携帯電話を購入した場合、従来は本体を購入した企業において、通信契約を結ぶ事がほとんどであった(※1)。この場合、携帯電話を購入後、使用をやめるか、他社の新機種に乗り換える場合をのぞいて、携帯電話本体を購入した会社にお金を払い続ける。また、コピー機の場合も同様にコピー本体を購入した企業に、コピー用紙代金やメンテナンス費用(保守料)としてお金を払い続ける。このように、本体と後日のサービスが一体となっているサービスにおいて、よく利用されているのが、今回ご紹介する「アフター縛り」というビジネスモデルだ(※2)。

 ところで、お客様はなぜ、本体購入後に他社に乗り換えないのであろうか、これは「移動障壁」が存在するからである。そもそも、携帯電話やインターネットなどは一度利用を始めると購入業者との関係が出来上がるので、画期的なインフラが発生してこない限りサービスを利用し続けるという傾向が強くみられる(※3)。そして、携帯電話を購入すると他社へ乗り換えた場合に、本体代金の投資コストが無駄になったり、一度覚えた知識や登録した情報が無駄になることから、なかなか他社のものに乗り換えることに抵抗を感じるようになる(契約での縛りもあるがそれは後ほど書いていく)。


 このように、商品やサービスが本体とその後の継続的なものとでできており、他社へ乗り換える移動障壁が大きいものに関しては、この「アフター縛り」というビジネスモデルが活用できる。この場合、本体部分を限界まで安くすることで、販売時に置ける競争優位を作り出す事が可能だ。例えば、よく見られるのが100円パソコンというものだ。これは、インターネットの利用を2年間継続するなどといった条件のもとに、パソコンの本体価格を赤字で販売するビジネスモデルである。なお、このビジネスモデルは、「アフター縛り」に「顧客生涯価値での競争優位性の確立」というビジネスモデルを加えたものだ。販売時には赤字になっても、その後の継続的なインターネットの利用により赤字部分を補填することで、利益を生み出すことが出来るのである。なお、途中解約の場合には違約金を支払うことが条件となっている。


 このように、今日ご紹介したビジネスモデルは私たちの周りにあふれている。近年話題になったものでは、ネスプレッソがある。ネスプレッソは、ネスレの珈琲マシンで、珈琲を作るためには専用のカプセルが必要になる。カプセルは1つ1つが使い切りになっており、珈琲のおいしさを左右する新鮮さを維持することが可能である。この新鮮さというコンセプトが使い切りのカプセルという意味付けを後押ししたことも今回のネスプレッソの成功であったと考える(私は、今回のネスレの成功は、洗練されたイメージを合わせて提供したことが成功した要因であると考えています。)


 この他にも、カミソリと刃(いわゆる「ジレットモデル」)や最近では、トラックや乗用車もIC(コンピュータ)を組み込むことにより、他社の部品を使えないようにしているものも多い。ICの中身は、販売したメーカーでなければいじることができない。こうなると購入したメーカーにしか修理が出せないことになる。車両の場合は、携帯電話の通信とことなりアフターメンテナンスは車両を購入したメーカー以外でも出来るので、このように移動障壁をみずから作り出すことが行われているのである。一方、似ているシステムにプリンタのインクの他社使用がある。あるメーカーでは、他社が販売している安い再利用品を使う事ができるが利用するたびに警告メッセージがでる形をとっており、軽い移動障壁を用意している。この辺は、企業イメージと同時に、過度な移動障壁を用意することが購買時において競争優位性を無くすことを懸念しているのだろう。


 さて、今回ご紹介したビジネスモデルだが、いつものごとく、サービス利用開始時にある程度の投資があり、後日付属的なコストが生じるような機械や携帯などの商品販売業だけに活用できるモデルでは無い。このモデルは、サービス業にも利用可能だ。やりやすいのが、サービス業に製品販売を混ぜる方法である。例えば、エステなどにおいて、美顔器などの機械を値引き販売する。それと同時に後日のサービスをセットとする方法だ。移動障壁としては、美顔器をサービスにおいて毎回使用するか、契約で縛る方法が考えられる。(※4)。また、特別な製品を販売せずサービスだけ行っていても、例えば、会計事務所などにおいて会社の設立を無料として、会計顧問を2年間縛りにするなどの方法も取る事ができる(※5)。飲食店においても、少し難易度は高いが応用可能だ。ここではあえて書かないので、それぞれ考えて欲しい。それでは今から1時間時間をとって、今回のビジネスモデルが応用できないか、できるという前提で考えていただきたい。あなたならできる。なぜなら、ここまで研究熱心だからだ。あなたであれば、今の状態をもっと良くできることを心から信じている。それでは、頑張りましょう。では、また、次回お会いするときまで。


※1:現在はsimフリーなどに見られるように、携帯本体と通信会社を別々にすることも可能である。また、以前は移動すると電話番号やメールアドレスが変更になったため移動障壁が大きかった。

※2:一般的に、ビジネスモデルの書籍等においてカミソリ本体とそれの付属品である刃の販売のメーカーであるジレットにちなんで、ジレットモデルとして紹介されている。

※3:ネットワーク経済性という

※4:値引き販売に伴う法律的な問題については考えていないので、注意していただきたい。

※5:会計の場合には、細かい点を1から説明するなどの手間が移動障壁の1つとなる。

新ビジネスモデルを構築するためのビジネスモデルパーツ入門講座

結局どうすれば現状を脱却できるのか。そのためのヒントとなるような記事をビジネスモデルという切り口から綴っていきます。僕の定義するビジネスモデルは、一般的に言われているビジネスモデルとは異なり、経営戦略的なレベルのものだけではなく戦術レベルのものや、マーケティング・財務的等のものまで含まれます。このブログを通じて、経営者の方がビジネス変革のヒントをつかんでいただけるきっかけになれば幸いです。

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